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2 この山村集落にどんな未来を描くか。

現在の日本では多くの人びとは、文化財の「保存」という言葉に対して「規制」という言葉で反応する。確かに保存については規制がかかる。その規制に対して助成するというのが、文化財保護法の仕組みである、したがって、保存に対して規制と反応するのは一面では正しい認識であるともいえる。しかし、ただ規制がかかるといっているだけでは物事は進まない。近い将来に村がなくなってしまう危機さえあるいま、自分の村をどんな村にしようとしているのか、積極的に考え提案をすることこそが必要である。保存はしない、規制はしない、村人がそう結論するのであれば、それに従わざるをえない。しかし、この桃源郷をこの世からなくしてもよいのか。
町並み保存、いやこの山間の集落青鬼では「村並み保存」のほうが適当な語彙である。「村並み保存」は村づくりの一方法である。これまで祖先が長い年月を通して築いてきた伝統文化、物質の遺産を財産として評価し、保存し活用しながら、自分たちの村にどのような未来を描くかをたしかめながら進める村づくりである。村に何があり、それをどのように保存をするのか、それについてどんな規制が必要なのか、そしてどのような助成を必要とするのか、具体的なことを十分に研究することが必要になってくる。いま青鬼の人びとは村並み保存を模索しだしている。
田植えがすみ、農繁期がすぎた1996年7月の20日21日の土曜日曜日、青鬼の人びとは海を渡って佐渡の宿根木に研修旅行をした。宿根木は江戸時代には千石船の港町として栄えた。岩場の海岸に立地する小さな平地に伝統的な姿を伝える家々が密集している。この集落は1991年、「重要伝統的建造物群保存地区」に選定され、町並み保存を進めている先進地であり、保存事業が進んでいる。
伝統的建造物群保存地区とはどんな制度か。保存には規制がかかる、自由にならないではないか、このあたりの不安を自分の眼で確かめるための研修旅行であった。町並み保存の実情をまず現地で知

 

 

 

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